このマガジンは「畑のそばに生きる様々な人」と「その暮らし」の紹介を通じて、皆さんと一緒に生き方の選択肢を再発掘していくメディアです。

皆さんは「田舎暮らしをしてみたい」あるいは「世界一周旅行をしてみたい」と思ったことはありますか。本日ご紹介するフリー編集者・ライターの石川たえこ(いしかわ・たえこ)さんはその両方も実現されている方。

現在Iターン移住先の長野県の南部の町、伊那谷で田舎暮らしをしながら、新たなチャレンジとして、一棟貸しの宿を開業すべく、目下古民家をDIY中だそう。移住、そして宿開業へ彼女を突き動かしているものとはなんなのでしょうか?

新婚旅行は「世界一周」。農村移住を選んだワケ

(世界一周で訪れたウユニ塩湖)

ハタケト:たえこさんはIターン移住で長野に住まわれたんですよね。きっかけはなんだったのでしょうか。

たえこさん:きっかけは新婚旅行で世界一周したことです。

学生のときから海外への関心は強くあって、就職先も海外に行けるような職種がいいと思っていたのですが、就活中はご縁が無くて…。そのため、発想を転換して海外に行く仕事ではなく、長期休暇をとって海外旅行に行けそうな会社を選ぶことにしたんです。それで大手の銀行に勤めていました。

しばらくして、パートナー(現在の夫)から、「実は世界一周するのが夢」であると知らされたんです。当時、真面目な銀行員をしていた彼からは全く想像もできない夢でとっても驚きましたね(笑)。それから「せっかくなら新婚旅行として一緒に行けたら、一生の思い出になるね」と、あっという間に話が進みました。結婚してすぐに、2人で会社を辞めて、半年後にはバックパックを背負って新婚旅行を兼ねた世界一周旅に出発。当初の予定より長く、約500日かけて帰ってきました。

(旦那さんとの新婚旅行での一コマ)

ハタケト:新婚旅行で世界一周!とても楽しそう。しかし、それがなぜIターンのきっかけになったのでしょうか?

たえこさん:旅の中で、田舎にも都市にもジャングルにも行ってみました。あらゆる暮らしの場を経験したことで、帰る頃には、東京よりもちょっと田舎のほうがわたしたちは心地よさそうと夫婦で意見が一致したんです。

極めつけは帰国して東京の電車に乗った時、みんなの疲れた表情や広告をはじめとする情報の嵐にどっと疲れてしまったこと。最後に1ヶ月近くガラパスゴス諸島にいたというのも影響したとは思うんですけど(笑)。

それで最初は、「東京に近い田舎」で暮らやすそうな場所を探していました。そんな時、夫婦共通の友人で長野に移住した方がいて、ちょっと会いに行ってみたんです。そうしたらそこの町がわたしたちにはとても居心地よくて。何回か行くうちに、「この人たちがいるなら大丈夫かな」と思える人も増えてきて、長野への移住を決めました。

(受け入れてくれた長野の方々。)

伊那谷ではじめた、畑とともにある暮らし

(伊那谷の風景。)

ハタケト:現在はどのような環境で暮らしているのですか?

たえこさん:わたしの暮らす飯島町は、長野県の南部、中央アルプスと南アルプスに囲まれた伊那谷の中央に位置しています。ぐるっとアルプスの高い山に囲まれていて、ほとんど雪も降らないし、台風も来ないような気候的にも暮らしやすい地域です。海はありませんがそれ以外のものは自給できるほど豊かな場所です。

ハタケト:住んでみる前と後で感じたギャップなどはありましたか?

たえこさん:最初はすごくスローライフで、時間の流れもすごくゆったりしているだろうと思っていたのですが、住んでみて分かったのは、意外と忙しいということ!

地域の祭りや行事もあるのですが、1年目は畑をはじめた、というのが大きいですね。ちゃんと育っているかな?って畑がつい気になってちゃうんですよ。最初ははどのくらい植えたらどのくらい収穫できるのかわからなかったので、大量にできてしまって。「このジャガイモたちどうやって調理しよう」と考えて調理したり、保存したりする時間も含めて忙しかったです。(笑)

(畑のことを指導してくれるお隣のおばあちゃん。)

ハタケト:どうして畑をはじめてみようと思ったのですか?

たえこさん:旅の途中で農が身近な暮らしをしている人に度々出会うことがあって、その人たちの暮らしがとても豊かに思えたんです。旅をきっかけに、畑の身近な暮らしに関心を持つようになったのが大きいですね。

でも最初は一箇所に移住するのではなく、東京と長野などを半々くらいのイメージで、多拠点暮らしを考えていたんです。ただ、実際に田舎で暮らしはじめてみて感じたのは、その地に根ざして活動しないと、近所の人とも地域の人とも関係性を築けないということ。

畑も最初は、二拠点でやっていたのですがかなり大変でした。だから考え方を変えて、ここでの暮らしを優先させようと、畑ともちゃんと向き合うようにしました。とはいえ、右も左もわからなかったので、お隣のおばあちゃんに「畑がやりたいので教えてください」と聞くところからのスタート。クワの持ち方から手取り足取り教えてくれて、今も畑のわからないことは何でも聞いています。

旅も、畑も。東京では動かない感情が動く

(妙子さんの旦那さんとおばあちゃん。)

ハタケト:畑をするようになって変わったこととかはありますか。

たえこさん:自分で育てることをやってみて、農業や畑の印象は変わりましたね。なんというか、これは旅の感覚に似ていると思うようになりました。

ハタケト:えっ!旅に似ているですか?

たえこさん:旅の楽しさは新しい文化を発見したり、学んだり、知らない景色や人と出会うことで様々な感情が生まれることだと思っているのですが、畑もそれに似ていて。はじめて自分の植えたタネから芽が出て「嬉しい。」と思う感覚が似てるんです。

東京で暮らしているときにはその感覚はありませんでした。旅から帰って来ていっそう東京って全然刺激ないな、と感じていました。日々大量の情報を浴びているのに、です。

一方、畑では自分の感情が動くんです。「芽が出てきた。嬉しい〜!」とか「わ、虫に食われてる…悲しい。」とか。予想もしていなかった自分の感覚に出会えるというか。旅先で出会えたような感覚が、ここで味わえちゃうなと思ったんです。しかも、それが食べられるんですよ!とってもすごいことだなって思ってます。

これからのこと、畑のとなりでゆっくりと考えよ

(古民家DIYの様子。)

ハタケト:現在、古民家での宿をはじめるべく準備中なのですよね?

たえこさん:はい。古民家を現在DIYをしながら絶賛開業準備中です。もともと旅をしている時からいろんな宿やゲストハウスに泊まっていたこともあって、「ゲストを招く宿をライフワークとするのも楽しいかも」とぼんやりと思っていたんです。自分たちも自分たち以外の人がいた方が楽しいですし、外国人や様々なバックグラウンドの方が出入りする環境で子育てするのもいいなーなんて思っていて。そんなタイミングでちょうどいい物件にも巡り会えたので、やってみようと。

宿は一棟貸切スタイルにする予定です。隣に大きな畑や蔵、納屋や庭もあって。家族や親しい友人と来てゆっくりこれからの暮らしを考える時間にして欲しいと思っています。

ハタケト:ゆっくりこれからの暮らしを考える、ですか?

たえこさん:東京で忙しく働いていると、ふと立ち止まって、これからの暮らしを考える時間ってなかなか取れないじゃないですか。自分たちは思い切って旅をしたことでこれからの暮らしをじっくり考えて、たくさんの気づきをえることができました。そして、そうした気づきがあったから、今こうして田舎に移住し、理想の暮らしができているのだと思っています。

それに、今私の周りで暮らしている人は楽しそうに暮らしている人が多いんです。特に移住者は自らの意志でここでの暮らしを選んでいる人が多いからかもしれないですね。ここで農や自然にふれてみたり、ここに暮らす方々との出会いを刺激に、これからの暮らしをゆったり考える時間を過ごしてほしいです。

(お宿はもう完成間近。)

ハタケト:宿を構えるとなると、しばらく旅は気軽にできなくなりますね?

たえこさん:長期の旅はしばらくいいかなと思ってます。今は田舎での暮らしが楽しいし、ここでやりたいこともまだまだたくさんあるので。具体的には決めてはないですが、まずはこの宿が順調に回り出したら、伊那谷でもう何軒か宿をやりたいなんて夢もよく話しています。まずは、この場所にいろんな方に来てもらいたいですね。

(インタビューはここまで)

一棟貸し古民家宿「nagare」のオープン予定は今年の夏を予定しているそう。開業がとても楽しみです!お宿の情報は解禁されているそうなので、ぜひ下記のリンクも合わせてご覧くださいね。

一棟貸し古民家宿「nagare」:https://nagare.cc/comingsoon/

Instagram:https://www.instagram.com/nagare_yado/

Facebook:https://www.facebook.com/nagare.yado/