このマガジンは「畑のそばに生きる様々な人」と「その暮らし」の紹介を通じて、皆さんと一緒に生き方の選択肢を再発掘していくメディアです。

岐阜県中津川(なかつがわ)市の写真家百姓で、Koike lab.代表の小池菜摘(こいけ なつみ)です。畑の魅力伝道師の中では現在唯一の農家。畑に生かされている人間として、なにをお伝えできるかなあなんてずっと考えながら、今日も芋を愛でています。

ハタケト、今。

3月が終わるって、少し焦っちゃうような響き。
結局あったかいまんま春がしっかりきて、梅もらんらん咲いて、桜がこんにちはしてきている。すごいね、たけのこだってきっと早く食べられるのかも。

Koike lab.が主にそだてるのは里芋・さつまいも・落花生で、この子たちはみんな9月〜11月に収穫する秋の顔。その全部のはじまりは一斉に4月。
全部、全部よ。
今はその子たちが育つ土を整えているけれど、すでに彼らの声を聞けば、しっかりウォーミングアップを始めているもんだから、「ちょっと、落ち着いて」って、わたしたちは言うんだけれど聞いちゃいないね。
子孫を残すのに必死なのよ、こんなにも、地球が変じゃあ、ねえ。

(田んぼを起こしたよ。おはよー)

夏野菜をつくらない芋農家にとって、夏の収入源はじゃがいも。土を作りながら同時にじゃがいもの芽出しをして、植え付ける。3月に植えて、6月に収穫。他のお芋に比べたらなんてスピーディーなのかしらね。

4月はたけのこ
5月はにんにくの芽
6月は生にんにくとじゃがいも
7月はにんにくとじゃがいも
8月はさつまいもができはじめて
9月は里芋はじめ
10月は落花生を土からあげて
11月に全部出揃う
今年は12月にきくごぼうが出せたらいいなあ、ちゃんと寒くなれぇ

なぁんて言ってたらあっという間に季節を一周する。
そのはじまりの3月に、こんなに世界が揺らいでいるなんて、誰が想像できたのかしらね。

(3月の定点観測。緑が濃くなってきた)

おいしい食べ物は、いくらあっても困らない

世界は災害や新型コロナウイルスの猛威で今、「有事」のときが続いている。

こうした有事のときにはよく「農家最強」と言われる。
だってやっぱり生きていくのに食べるは必要で、コロナパニックでワニの100日目を突然迎えそうな私ですら、今日も3食きっちり食べている。

除草剤を初期に一回使っただけのピュアなコシヒカリはあと600kgぐらいあるし、

里芋も芽が出過ぎたり返品されてくる子ももうちょっと出てくるし、

売り物にはならないけど、痛んでるところを落とせば食べられるさつまいももちょこちょこいる。し

94才になる夫のおじいちゃんが手を入れてくれている家庭菜園のおり菜はめちゃくちゃ美味しい。

「野菜は腐りかけが一番美味い」と言われる代表格の玉ねぎやじゃがいもも本当に最高。

夫がハンドドリップしてくれた珈琲といただく、炒りさや落花生(※落花生をさやごと炒ったもの)はお腹も心も脳みそも満たしてくれる。

(「さといもって書いて!」と3歳のムスメに言われたので)

家から坂を下ったところに養鶏場の自販機がある。その卵もめちゃくちゃでかくて美味しい。

しいたけ農家も、トマト農家も、いちご農家も、自然薯農家も、こんにゃく農家も、栗農家も周りにいる。

仲間だけで大体の野菜は揃うから、食べたくなったら買いに行けばいい。

牛乳もチーズもバターも、地域の酪農農協連合会からいつだって買える。

近所の道の駅や直売所に行けば先輩農家の余剰品のバザーがいつだって開催されていて、ありえない安さでありえないクオリティ(いい意味で)の変な野菜(これからは山菜がたのしみ)が手に入る。

我が家が今すんなり手に入れられないのは、豚コレラで出荷停止&さっ処分になった豚肉さんたちと、高級すぎてちょっとキツイ飛騨牛と、新鮮な魚(岐阜県は海がないってのは、相変わらずちょっとつらい)くらい。

食べるものたちを、どこで何を買っても、当たり前に鮮度がよくて、そして当たり前に美味しい。

田舎で農を営みながら「食をする」というのは、ほんとうのしあわせを手に入れる近道なんじゃないかと思うぐらいに、有事のときでも我が家は豊かだ。

(おやつにはグリルに突っ込んで焼いた焼き芋にバター)

さて、4月。

みんなにとってとっても大切な4月。
農家にとっても大切な4月。ここでちゃんと土を仕上げ、タネをまき、手入れをして。
地球が忙しくなるよ。

今年は世界が閉ざしていく、いつもと違う4月だけれど、この時を、ちゃんとみて、見極めて。
ひとのせいにしても、なにも変わらないってこと、あなたが一番よくわかっているはず。

だいじょうぶ。

そちらの梅はもう終わった?桜は咲くかな。
空気のあたたかさや柔らかさはどう?
ちょっとスマホから顔をあげて、自然を。いのちを、たしかめてみて。

さぁて何を食べようかって、少しにやっとしてみて。

食べればたぶん、もう一歩前に進めるからさ。

つぎの5月には周りにいる魅力的なひとを紹介したいなって思っています。

元気に、またね。

(model : 金子春、special thanks:土助梅園

photo by Natsumi Koike