このマガジンは「畑のそばに生きる様々な人」と「その暮らし」の紹介を通じて、皆さんと一緒に生き方の選択肢を再発掘していくメディアです。



3月。徐々に春らしく気持ちのいい日差しを感じるようになったと思ったら、突然の新型ウィルスCOVID19が世界を混乱させています。「ハタケト」をご覧になってる方の多くは、食や健康のあり方に意識を向けている方が多いと想像しますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

様々な考え方がある中で、早く誰もが健やかで快適に過ごせるよう、1日も早い収束を願ってやみません。わたし自身も手洗いなど基本的な注意点を守りつつ、免疫力が下がらないよう睡眠と食事、そして、できる限り平常心でいるように努めています。

また、こんな時も小さな畑の存在に助けてもらえることが多々あります。それは、単に食の自給というだけでなく、「自分らしくある」というマインドを思い出させてくれること。今日はそんなお話をお伝えします。

(淡路島の敬愛する農家さんから分けていただいた苗により、初めて収穫できた玉ねぎ。根っこまでおいしくいただきます。)

無理をしない、周りを意識し過ぎなくていい

文字にするとあまりにも当たり前のことですが、わたしは度々「自分らしくいる」ことが難しく感じることがあります。物事が前へ前へ・上へ上へと進む世の中、ついつい、もっと良い自分であるように、もっと向上できるように、もっと成果が出せるようにと、いとも簡単に「もっともっとマインド」に捉われがち。でもそれを、ふと「自分に適したペースで良いんだった」と思い出させてくれるひとつが、家庭菜園だったりします。

例えば朝の過ごし方。
畑の諸先輩方はみんな朝早くからよく働く方ばかりですし、一応わたし自身も朝の作業効率の良さを理解してるひとりとして「ヨシ、これからは仕事の前に、朝は畑だ」なんて考えていました。朝の気持ち良さは大好きだし、何も疑わず、畑をするなら朝だと信じていたのです。しかし、いざやってみたら、朝の畑はわたしに合っていないと気がつきました。

朝から畑に直行しようものなら、寝てる間に変更が出ていた仕事の対応に遅れてしまったり、午前中のオンライン会議に慌ただしく参加することになったり、夜の打合せまで体力がもたなかったり、どうしても噛み合わないのです。そこで思い切って「朝は畑に行かず、朝のクリアな脳は仕事に使う」と決めたら肩の力が抜けてとても楽になりました。

朝から畑をちゃんと管理できることはとても理想的ですし、夏の暑い時期などは早朝しか屋外作業もできないのですが、趣味の家庭菜園なのですから「仕事や家族のことが優先で当たり前」でした。時間の使い方は暮らしそのもの、わたしの日々そのもので、こういう管理能力が本当の意味での自己責任なのかも、という考えに至り、今は自分のペースを大切にしています。

(昨年から籾殻をたくさんすき込んだ畑に、スナップエンドウ。)

思考を狭めたり、発想にフタをしなくていい

タネや苗も自由に選ぶようになりました。尊敬する多くの農家さんたちに近づきたくて、固定種(何代も選抜や淘汰されながら繋ぎ遺伝的に安定した品種)や在来種(地域の風土に合わせて適応した固定種のひとつ)、もしくは自家採種(育てた作物から次のタネを取ること)したタネを扱えるようになりたかったのですが、それも無理なく少しずつチャレンジすることにしたのです。

前回書いたように、昨シーズンの畑があんまり満足いく出来じゃなかったおかげで、もっと土壌そのものを整える気持ちになりました。硬くて水はけのあまりよくない土の表面を耕してから在来種や自家採種のタネを下ろしていたのですが、雨が降ればまたカチカチの土になってしまい、せっかくのタネも苗も成長しづらそうだと実感したからです。全ての畝に籾殻(もみがら。お米の外皮)や燻炭(くんたん。籾殻をいぶして炭化させたもの)をすき込み、緑肥として雑草も生やさせたりして、土がふかふかになるように工夫しました。また、水はけのことを考えて、この春は全体的に畝を高くもしてみました。

タネや苗も色々試すようにしました。友人や自分が採ったタネ、交換会でいただいたタネ、農家さんに分けていただいた貴重なタネや苗、家庭菜園の大先輩たちが育てた苗、在来種専門の種苗屋さんで買ったタネや苗、超大手の種苗会社やホームセンターで販売してる交配種(品種改良など交雑させた種)のタネや苗…と、直感的にピンときたものやご縁のあったタネを自由に組み合わせられる今の状況に、広くも深くも、しみじみと感謝しています。

もの言わぬ命が示すメッセージを受けて

(春の野草、カラスノエンドウ。新芽を摘み、おひたしや胡麻和えにするのが好きです。)

畑で育つ野菜はある意味とてもマイペースな存在です。環境との最適解を探り、素直に成長し、出し惜しみなく懸命に生きていますよね。さらに自然に生えてくる野草は一段と力強く「メッセージ」を発しているようにも感じられます。

うちの畑では野草の種類が大きく2つのゾーンに分かれていて、主にはカラスノエンドウやハコベ、他の一部だけはスギナやシロツメグサというように、生えてくるものが異なります。小さい範囲ながらも、3年前までは別々の所有者さんの管理下にあったり、部分的に日照条件が少し違うなどの理由から、土壌の生態系が部分的に違うのだと気がつきました。というよりも正しくは、「生えてる野草が違うから土の状態が違うことに気づけた」ということ。さらにそれも、3年前にお借りした時の草や虫などの状態と、今のそれらがまったく変わってきたことを実感したから、でした。この春は、畝それぞれの状態に適した作付けをしようと考えています。

土壌微生物もタネも草花も、言葉こそ発しませんが、それぞれ「生きる」姿を現象にして、主張しながら生きています。わたしたち人間も、個のペースや可能性を大切にしながら、周囲との最適解を探る努力を日々忘れずにいたいものです。