連載「サラヤとハタケト、愛ある暮らし」では、暮らしと自然の両方を大切にできるサラヤのプロダクトを紹介します。

小学校などで見かけた緑色の手洗い石けん液や、植物性のヤシノミシリーズなど、サラヤさんでは多様な洗浄剤を製造しています。その中のひとつで、前回お話をお聞きした「ハッピーエレファント」シリーズには、サラヤさんが独自開発した「SOFORO(以下、ソホロ)」という生分解性に優れた天然成分が使用されいます。

実はこのソホロこそ、画期的な存在でした。洗剤を使うわたしたちに、そして社会環境にも肌にもやさしい洗剤を可能にした立役者、ソホロについて、サラヤ広報宣伝統括部の廣岡竜也さんに伺います。

界面活性剤についてアップデートする

ハタケト:ソホロは界面活性剤の一種と伺ったのですが、界面活性剤について改めて教えてください。

岡さん界面活性剤とは、簡単に言えば水と油の仲介役です。通常、水と油は混ざることがないのですが、界面活性剤が油汚れを包むことによって水の中に混じることを可能にする役割をしています。この特性は石けんや洗剤に限らず、例えばバターやアイス、マヨネーズのような食品にも活用されています。

ひとことで界面活性剤と言っても、動物性や植物性など原料や性質の違いによって数百から数千種類もあると言われ、ソホロのように生物由来の界面活性剤のことを専門的には「バイオサーファクタント」と言います。これは元々、自然界に存在していて、合成洗剤とも石けんとも違う「第3の洗浄剤」とも言われています。

ハタケト:合成洗剤と石けんの違いはどんなところですか?

廣岡さん:どちらも天然油脂が原料であるという点は同じです。合成洗剤の良いところは低価格であり洗浄力が高く、少量で汚れを落とすことができる点です。それに対して石けんの良いところは、石油系の合成洗剤と比較すると、環境に優しいことです。ただ、水質や油汚れの影響を受けやすく、洗浄力は低いという弱点もあります。

ここで覚えておいて欲しいのが、合成洗剤の全てが悪いものというのは誤解であるということです。約100年前に誕生した石油原料の合成洗剤は、肌への刺激性が強かったり環境への負担が大きかったため、良くない印象がついてしまいました。しかし技術は進歩していて、肌に優しいものや環境に配慮され生分解性の高い合成洗剤も増えています

ハタケト:「生分解性が良い」とは具体的にどういうものなのでしょうか。

廣岡さん:石けんや洗剤に含まれる界面活性剤を水中の微生物が分解しやすい、ということです。生分解性が良い石けんは非常に分子構造がシンプルなんです。そのため微生物が分解しやすく環境に戻りやすい。対して石油系の合成洗剤になると分子構造が複雑なため分解に時間を要します。とはいえ、植物系の合成洗剤の中には、石けんと変わらない生分解性のものもあるので、単純に「石けんが環境にやさしく、洗剤が悪い」とは言えません。

ただ、現在でも合成洗剤にはなかなか自然界で分解されない難生分解性の界面活性剤が使われていることがあります。その代表が食器洗浄機用の洗剤なんです食器洗浄機の場合は、洗剤が泡立ちすぎると機械の故障に繋がるため、泡立たない専用の洗剤が必要になります。しかし泡立ちが少なく洗浄力が高い特性をもつのは、難生分解性のブロックポリマー型界面活性剤しかありませんでした。

サラヤはここに注目し、泡立ちが低くて洗浄力も高いソホロの特性を活かし、環境にも優しい食洗機用洗剤を初めて発売したんです。

毎日する食器洗いだからこそ、ストレスなく使用できて環境にも良ければ尚更嬉しい

別の研究があったからこそ着目した発酵の力

ハタケト:他の主力商品があるにもかかわらず、新たな洗剤を作ったのはなぜですか?

廣岡さん:合成洗剤と石けんには、先ほどお伝えしたように良い点と悪い点があります。そんな両者の弱点を補うものとして何かできないかと考えていた時に、バイオサーファクタントという天然の界面活性剤に着目しました。バイオサーファクタントの存在は1970年代の論文で明らかになっていたのですが、それを工業化するのは雲を掴むほど難しいことだと言われていたんです。

創業から石けんと洗剤の両方を製造してきた弊社には、どちらに対しても実績と研究知見があります。ただ、新しい分野の可能性があるのであればチャレンジしよう、と短期成果に偏らない研究者目線をもっていたからこそ、世界で初めて実現できたのだと思います。

ハッピーエレファントシリーズ・食器洗い機用ジェル

ハタケト:サラヤさんには挑戦できる土壌があるんですね。

廣岡さん:サラヤの「天然素材を用いて環境や人に良いものを生み出す」という価値観が関わってきます。探究心が強く、何かひとつの製品の研究から応用して、新たなものを生み出す力があるのだと思います。ソホロの研究が成功したのも、弊社の主力製品の1つであるラカント(自然派甘味料)の研究を応用した背景があるんです。というのもラカントは、トウモロコシの発酵から得られる天然甘味成分からできているのですが、この日本古来の酵母の発酵の力に注目したことが、ソホロ誕生に繋がってるんです。

天然酵母に植物油と糖分を与えて発酵させることで、油を分解する成分が生成されます。それがソホロです。また天然酵母は常温で発酵するため、高温にするための熱エネルギーは不要。さらに、生成されたソホロを取り出す際にも特殊な溶媒が不要で環境に優しいと言えます。今ではソホロがもつ様々な働きにも注目していて、洗剤だけでなく化粧品や食品、さらには細胞保存液などにも活用が進んでいます。

継続をつくる「いいとこ取り」

廣岡さん:ソホロは安全性が高く、洗浄力や環境にも優しい点で優れていますが、実は弱点が1つあるんです。それは価格です。洗浄成分をソホロ100%にして洗剤を作ると、通常商品の何十倍もの金額になってしまうため、商品化は現実的でありません。そのため、ハッピーエレファントシリーズには、植物性洗浄成分と組み合わせたハイブリットモデルもあります。

小さなお子さんがいる家庭や共働き家族など、生活環境に合わせて無理のない範囲で商品を選択して欲しい、と廣岡さん

廣岡さん:わたしたちが今重視しているのが、ソホロをより多くの人たちに使ってもらえるようにすることです。存在を知らない方が多いと思いますので、まずは手頃な価格帯にして手に取ってもらうこと。そうして生産量を増やすことで、ソホロをはじめ、ボルネオの環境問題までグローバルに広げていきたいです。

ハタケト:環境に良いものと聞くと、便利さを犠牲にしたり何かしらの我慢が必要なものかと思っていましたが、良いところをうまく合わせることで、環境も自分も無理なく気持ちよく生活できますね

廣岡さん:そうですね。わたしたちはバランスが大切だと考えています。ソホロにおいても、発酵という自然界のバランスが成り立つことによって産みだされているんです。自然本来の力をうまく生活に取り込むことが、人の暮らしも環境もより良くできると思います。

(インタビューはここまで)

天然素材を使って人と環境に良いものを生み出す。商品の販売だけを目的にせず、真剣に環境問題に向き合う企業のスタンスから、廣岡さんは洗剤に対するフラットな思いを語って下さったのだと思います。

わたしは環境へ配慮した取り組みが世の中で広まっている中で、何か行動に移したい気持ちと裏腹に、環境に良い生活へのハードルを感じていました。ですが、今回のお話をきっかけに、自分の生活の中で1つできることから始めるのであれば挑戦できそうだと気づくことができました。一度に全てを変えるのは難しいですが、まずは日用品から少しずつ自分の納得のいくものを選んで購入しようと思います。