前回、「サラヤとハタケト愛ある暮らし」の初回記事では、ハタケトにはヤシノミ洗剤ユーザーが多いことをご紹介しました。

ハタケトの人気コラムニストである、写真家百姓の小池菜摘さんもそのひとり。

自然と人が織りなす景観の素晴らしい岐阜県中津川市に移住して9年目となる菜摘さんは、この町に暮らすようになったからこそヤシノミ洗剤を使うようになったといいます。

ヤシノミ洗剤に限らず、日用品を、ある独自の考え方で選んでいる菜摘さん。その考え方に、聞き手のハタケト編集部は目から鱗と同時に涙が落ちました。

愛ある暮らしを送る、大切なヒントをお聞きしました。

生活排水が丸見えなこの町で

ハタケト:菜摘さんはなぜヤシノミ洗剤を選ぶようになったのでしょうか。

菜摘さん:ここ中津川市には下水道が整備されていないご家庭もあるんです。ちょっと近所に野菜の配達にいくだけでも、そうしたご家庭に出会います。たまたま洗濯機が回っていたりすると、そのまま下に洗剤がわ〜と流れ出ている。もう、丸見えなんですね。そういう地域だからこそ、周りに気を使っている人はたくさんいて、日常の会話でもそういう話が出るんです。今まで洗剤のことなんて考えたこともありませんでしたが、影響されるのは一瞬でした。

菜摘さん:同時に、農家として持続可能な農業を考えて、いや、突き詰めて仕事をしているので、日常生活でも自分が出すゴミの自然への影響を必然的に考えるようになりました。

なるべく生分解性の高いものであることを重視したい。でも洗剤ってなくなったときにすぐ買いに行きたいものだから、近くで買えることも大事。それでヤシノミ洗剤を選ぶようになりました。

ハタケト:ヤシノミ洗剤は食器用の洗剤で使われているんですか。

菜摘さん:家では食洗機を使っているので、ヤシノミ洗剤をつかっているのは加工場の洗い場です。クッキーなどのお菓子を製造しているので、ものすごい量の洗い物をしています。ただ、容器についたバターはなかなか落ちないので、今はなくなく油汚れのものは業務用のめっちゃ強力なものを使ってます。

でも、今回の話をうけて、はじめてヤシノミ洗剤にプレミアムがあるってことを知ったんです。「油汚れに」と書いてあったので、さっそく購入してみました。油落ちもいいので、レギュラー昇格です。

(実は同じサラヤ社からはハッピーエレファントというシリーズで食洗機用が発売されているため、菜摘さんも次にそれを試す予定だとか)

生分解性への思いを生んだ「菊ゴボウ」

ハタケト:なるべく生分解性にこだわるというのは、洗剤にかぎらずですか?

菜摘さん:そうですね。他にもボディソープやシャンプーも石鹸を使ったり工夫はしていますが、うちは農家でもあるので一番気を使っているのは農薬です。農薬が一番ダイレクトに環境に影響を与えるものなので。

うちは農薬をまったく使わないわけではなく、必要によって農薬も使っています。農薬は例えば病気を直す、虫を寄せつけないなどの効能を目的に使います。その効能を生む成分の選択肢はいくらでもあるんですね。ひとくちに農薬と言っても自然の影響が少ない、残留しにくいことが証明されている農薬もあるんです。うちはなるべくそうしたものを選ぶようにしています。

ハタケト:先ほど持続可能な農業を突き詰めているという言葉もありましたが、そこまで気を使うようになったきっかけはなんだったのでしょうか。菜摘さん:この地域では「菊ゴボウ」という伝統野菜があるんです。菊ゴボウは生産するのに強力な農薬が必要で、連作障害が重く、一度作ると7年間は同じ場所では作ることができないんです。菊ゴボウは単価が高く、いわゆる儲かる野菜。だからこの地域はかつて一大産地となり、みんなが一斉に一面に菊ゴボウを作っちゃったんですね。そして誰も作れなくなってしまったんです。

菜摘さん:伝統野菜なのに誰も作れない。それが何年も続くと、高齢化も進み、担い手もいなくなりはじめていました。わたしたちが移住してきたのは、ちょうど菊ゴボウの生産をやめて10年目のときでした。

「菊ゴボウっておいしいし、こんなにみんなから支持されているのになぜ作らないの?」

おじいちゃんに話を聞くと、そんな背景を教えてもらいました。

土に負荷をかける農業の在り方そのものをはじめて自覚したきっかけでした。たまたまわたしたちは持続可能じゃない農業がいきつく結論を先に知ってしまったんです。つくれなくなるという結論を。

そこからさまざまな文献をあたって調べる中で、土に負荷をかけすぎてはいけないということが分かり、薬剤選びでもできるかぎりの気を使うようになりました。防虫の農薬は一度も撒いたことはなく、除草剤だけを使っています。それも水と水素とリンだけに分解される、生分解性のバスターというものを選んでいます。

100年の目線でいのちを扱う

菜摘さん:ちなみにバスターは一般的に流通しているランドアップという除草剤の値段は4倍、効き目に関しては1/3以下。めちゃくちゃ効率は悪いんですよ。(笑)

でも、こっちが我慢すればいいだけのこと。雑草に関して言えば、手でとる作業をすればいいですし、ヤシノミ洗剤で言えば、落ちにくい汚れも3回洗えば落ちる。ちょっとこっちが頑張ればいいなら、それでいいって思っています。

ハタケト:その我慢を取れるのが素晴らしいです。

菜摘さん:その先の恐怖を知っていますからね。さらに言えば、自分の子どもや孫の代にも畑を繋ぎたいので、10年、20年の話ではなく、100年、200年の目線で考えています。そのために必死こいているわけです。

わたしが嫁いだ小池家は120年ここで農業をやっているんです。栽培しているさつまいもの紅あずまは、農業を始めた当初から継いできて今も栽培しています。わたしは当然、種芋を買っているものだと思っていたんです。でも違った。ここはすごく寒い地域なので、種芋を次の季節まで保管することも簡単ではないんです。おじいちゃんやおばあちゃんのすごい技術によって繋がってきた。そういう100年レベルで継いできたいのちを扱っているんです。小池家は物持ちもよく100年選手の機械も残っていたりします。そうした先人の100年単位の営みを感じ取っているので、自ずと自分の目線も長くなっているのかもしれません。

一番高いものから目を向ける

ハタケト:こだわればこだわるほど、値段って高くなってしまうと思うんです。菜摘さんは値段との折り合いをどのようにつけていますか。

菜摘さん:実はわたし、自分の買い物に対して「安さ」って気にしないんです。「安物買いの銭失い」ってめちゃくちゃあると思っていて。例えば自分が気に入ったものが一番安いものの3倍や4倍したとしても、結局最後まで使い切れたり、長持ちして結果的に得になるのではと思っているんです。

しかも、たった4倍で持続可能なものに投資できるんですよ。応援って感情だけでは意味がないとドライに思っていて、お金をお支払いすることが一番だと思っています。推しにお金を払いたい。ブランドバッグとかじゃなければ、せいぜい5倍なんですよ。100円が500円になっただけで、自分の満足度も高く、応援できる。だったら、500円払った方が幸せだって考えています。

ハタケト:菜摘さんは以前プレミアム貧乏というタイトルのコラムで、自分たちの生活にかかるコストを下げることで幸せな生き方を選んでいると書いてくださっていたので、値段を気にしていないというのは正直意外でした。

菜摘さん:値段の高いものを選ぶことと欲を抑えて生活のコストを下げることは両立すると思っています。なぜならば、満足度の高い買い物をしていると、余分な買い物はしなくなるんです。

安いって基準だけで買い物をしていると、そこに「満足」がないんです。満足がないと、また欲しくなってしまって欲望は収まりません。結局服だったら着なくなって捨ててしまったり、日用品だと、例えばですが、手が荒れて病院にいくことになったら、むしろマイナス。得られる満足感が少なくて、マイナスになる可能性が高いんです。

なんならわたし、基本的に一番高いものを買います。例えば最近だと除湿機を買ったのですが、家電量販店で一番いいものが7万円。一番安いものが1万円でした。7万円のものを買ってみてください!全然違うから(笑)

まず一番高いものを視野にいれて、そこから自分にとっては必要のないスペックを引いていき、自分にあったものを選んでいます。そうすると、なんども買い直さなくていいんです。結果的に節約になると思っています。

(菜摘さんがえらんだ調味料たち)

菜摘さん:なにより、買ったら幸せな気持ちになりますよ。例えばお砂糖。うちではきび糖を買っているのですが、普通の白いお砂糖の3倍の値段はすると思います。でも、購入したきび糖にご対面すると、一粒一粒がキラッキラしていて、自然界のものを食べられる状態にしたら、こんなにも美しいんだって感動するんです。値段の高さも買うという行為の幸福さには負けるというか。

自分が納得して選んだものは幸福を与えてくれます。しかも、自分にとっての幸福だけでなく、地球や子どもにも通じる幸福です。わたしはこの幸福を、わざわざわたしたちの農産物やクッキーを選んで買ってくれるお客様に教えてもらいました。幸福の循環にわたしも関わっていたいんです。

(インタビューはここまで)

なるべく安い買い物をすること。それがある種の賢さのように言われていますが、もしかしたらその買い物でわたしの心は満たされていないかもしれない。すごくハッとして、日用品の選び方から、もっと自分にも地球にも愛を注ぐ余地があるのではないかと考えさせられました。

「その買い物に幸福はある?」一度問い直してみてもいいかもしれません。

(header photo: Kojima Aoi)