このマガジンは、様々な形で暮らしに「ハタケ」を取り入れている人やその暮らしの紹介を通じて、自然と自分、双方を愛せる生き方を提案するライフスタイルメディアです。

新しいことを始める時は勇気も情熱も必要だからこそ、みんなで応援し合いたいもの。誰かのチャレンジに寄り添い、みんなが自分らしく生きられる社会を目指して活動する、ひとりの女性をご紹介します。

自然豊かな山間部を拠点にしながら、都心に暮らす人々と共に「食」に関する事業を展開する、塚本サイコさん。心地よいオーガニックカフェとして長年愛された渋谷のカフェ「daylight kitchen」(2018年にクローズ)を経営し、ピアニストとしても活躍されていたアーティストのサイコさんが、現在新しく取り組まれていることについてお聞きしました。

心から「いい仕事がしたい」と思う

ハタケト:さまざまな事業をされていますが、現在の活動について教えてください。

サイコさん:企業におけるオーガニックの社員食堂を提供する事業を継続しながら、「arila!(アリラ)在り方ライフデザイン」というWEBメディアをオープンしました。arila!は、食や農を含めたライフスタイル全般の分野で商いをしている人、もしくは始めたい人たちと一緒に発信するプラットフォームでもあります。ライフスタイルをより良くしたい人への「オーガニックな在り方デザイン講座」と、食や環境に関するスキルを具体的に学ぶ「畑で考え学ぶサロン(以下、ハタサロ)」の2つの学びの場を展開しています。

(サイコさんの会社が提供している社員食堂の食事は、召し上がる方にとって暮らしの一部でもあるため、皆さんの暮らしを想像しながらご提供されているそう。野菜がたっぷり使われ、素材の味を活かした料理は、おいしさを再発見することに繋がる大人の食育としても喜ばれている)

(ハタサロの活動の様子)

サイコさん:飲食業における20年以上の経験で、「業界の一般的な働き方には満足できない、でもなんとか自分を納得させながら仕事をしている人」が多いと感じてきました。本来なら、自分自身の在り方に納得できた上で、心から「いい仕事をしたい」と思える働き方がいいはずです飲食業に限らずとも、わたしとご縁があった方の人生は応援したいと思って、個人が望む在り方を一緒に考える場の主催や、その人らしさを活かした事業をプロデュースすることなども仕事としています。

ハタケト:サイコさんご自身は働き方で工夫されていることはありますか?

サイコさん:わたしは自然が豊かな場所にいるほうが自分らしくいられるので、山間部を拠点に、でも十分に力も発揮できるような工夫を心掛けています。在り方を軸にした事業は、ご縁のあった皆さんの人生を大切に考えながら情熱をもって取り組めるので、とても気持ちがいいんです。仕事も暮らしも、心から自分らしくできることを大事にするようにしています。

(素晴らしい自然に囲まれたアトリエの様子)

転機は、自分に問いかけ続けた延長線上に

ハタケト:ピアニストの活動から飲食業、とりわけオーガニックの分野に変えた理由は、どんなことでしたか。

サイコさん:こう言うと驚かれることもあるのですが、「カフェやってみない?」と誘われた時に、素直に「やってみたい!」と心が弾んだからなんです。それまでカフェどころか、食に関する興味が特別あったわけではありませんでした。でも、やってみたいと感じることは、その時うまく言葉で説明できなくても、挑戦する方がいいと思っているんですよ。

というのも、「やってみたい」と思うことを実行するうちに自分のことが少しずつ好きになれた経験があるんです。

(アトリエにて)

サイコさん:わたしは家庭環境からピアノの道を目指すようになったのですが、指と指の間を切開しないとピアニストを目指すのは難しいと言われたほど、手が小さいんです。周りのみんなが当たり前にできることができなくて、劣等感に苛まれる日々でした。

卑屈になって自分の世界に閉じこもりつつも、「わたしが表現できることはなんだろう」とずっと自分自身に問いかけていました。そうして作曲・コンピューター音楽・美術など、手が小さくてもできる表現に挑戦してみると、まわりがやろうとも思わないことができるようになるので、独自の表現になると気がついたんです。できることを地道に積み重ねていくうちに、手の小ささも段々と気にならなくなり、最終的には「わたしはわたしでいいんだ」と自分のことを認めてあげることができました。

(カフェ経営と並行してリリースしたCD作品『Tiny Finger Pianist』。手の小ささも自己表現のひとつに)

サイコさん:カフェ経営のお誘いを受けた時はちょうど、音楽家として商業的にならざるをえない自分にしっくりこなくて、「この道でいいのかな」と再び問いかけている時だったんです。うまく言い表せない違和感を消し去るように「カフェをやってみたい」と思い、それを素直に行動に移せて良かったと思っています。

手を取り合い、本質的な豊かさを

ハタケト:飲食店の経営は、WEBメディアarila!の立ち上げにも影響していますか?

サイコさん:そうですね。飲食業でご縁のあった農家さんやシェフ、店舗スタッフなど関係者一人ひとりと深くコミュニケーションを取るうちに、わたしは人に寄り添うことが大好きで、そのためには惜しみなくエネルギーを使えるということに気がつきました。同時に、心から気持ちよく働くためには、時には仕事に対する努力だけではなく、暮らしや仕事の在り方などから根本的に見つめ直すことが必要とも考えるようになりました。

一人ひとりにもっと輝いて欲しいという想いから「オーガニックな在り方デザイン講座」や「ハタサロ」のような、「在り方」を見つめ直す場を主催するようになり、ご縁のある方たちが活躍できるためのプラットフォームを目指してarila!を始めることしました。

(2021年5月にオープンしたarila!)

サイコさん:まだ始まったばかりではありますが、個人で商いをされている方やこれから始めたい方に記事を書いていただいていて、皆さんが自身と向き合うなかでの学びや想いを公開しています。一人ひとりがより良い在り方を目指すと同時に、近い価値観の仲間と共鳴して歩んでいけたら、一人では想像できなかった豊かな未来を築けると思うんですよね。

踏み出せば、見える世界が変わる

ハタケト:arila!はどんな人に読んでもらいたいですか?

サイコさん:arila!で書いている人と同じように、自分らしく生きたいと願っている人たちです。より良い生き方を目指して歩む等身大の言葉を届けて、「自分と同じようにがんばっている人たちがいるんだ」と一歩踏み出す勇気をおすそ分けしたいんですよね。

サイコさん:過去には劣等感でいっぱいで、あまり人と関わりたくないと思っていたわたし自身、今こんなにも情熱をもって人に寄り添い続けられるなんて思ってもいませんでした。幼少期から向き合い続けた音楽は、飲食業にも思わぬかたちで活かせましたし、誰かを勇気付けたいわたしにとって、音楽はずっと欠かせない表現手段でもあります。

何事もやってみないことには自分に何ができるかわからないと思うんです。自分らしくいられないのを何かのせいにして、狭い世界に閉じこもってしまうのはもったいない。無理のないところから小さな一歩を踏み出してみたら、心豊かに生きる道は必ず開けるということを、自分の手が届く範囲から伝えていきたい。そうすることで、一人ひとりが心豊かになることは、社会を根底から良くしていくと信じています。

(インタビューはここまで)

自分らしく生きることと社会がよくなることは繋がっている、なんて素敵な気づきでしょうか。難しく考えずに、まずは素直に思ったことを行動に移してみよう、と気持ちがすごく軽くなりました。まだ知らない自分の一面に出会い、未来へ繋いでいくのが楽しみです。

勇気が欲しい時にそっと寄り添ってくれる「arila!(アリラ)在り方ライフデザイン」はこちらから