このマガジンは、様々な形で暮らしに「ハタケ」を取り入れている人やその暮らしの紹介を通じて、自然と自分の双方を愛せる生き方を紹介するメディアです。

新しいことをするのが好き。楽しいことがしたい。でも、そんな気持ちを知らんぷりしていませんか?本当は行動したいのに、たとえば会社員だからと諦めてるとしたら、新しい可能性を考えてみるタイミングかもしれません。

今回お伺いしたのは、コロナ禍による在宅ワーク化をきっかけに故郷である静岡県沼津市にUターンした藤川和輝(ふじかわ・かずき)さん。同時期から複業をはじめた藤川さんは、都内企業に勤務を続ける傍ら、宿泊型コワーキング施設の設立やデザイン・イラスト、恩師のオリーブ農家支援、それにみかんを使用したクラフトビールの醸造など、多岐に渡る副業をされています。それだけ聞くととても多忙に聞こえますが、藤川さんは「やっと自分らしさを取り戻せた」と言います。

インタビュワーは現在、藤川さんと共にみかんを使用したクラフトビールの開発をしている、畑の魅力伝道師・ゆるみな。が務めます。新しいことをし続けたい人にとってハタケは宝の宝庫かも。どうぞお付き合いください。

在宅ワークをきっかけに、本来の自分へ

ハタケト: 会社員を続けながら、デザインやオリーブ農家、クラフトビール醸造など、さまざまな副業をしてるのはいつ頃からですか?

藤川さん: 2020年に入ってからです。本業は外資系の会社でマネージャーをしているのですが、それまでは出社して残業もしていたので、他の仕事をする余裕なんては全くありませんでした。

しかし、新型コロナウイルスが蔓延した頃から、会社が完全に在宅ワークになりました。時を同じくして親の体調が悪くなったこともきっかけに、地元である沼津にUターン移住したんです。

在宅ワークになると、今まで当たり前だった残業も通勤もなくなり、時間に余裕ができたんです。「あれ?これもしかして、他のこともできるんじゃない?」と思って副業をはじめました。

ハタケト: 時間に余裕ができたけど、趣味や遊びではなく仕事をはじめたのはなぜですか。

藤川さん: 最初から仕事として始めたわけではなくて、昔から頃から好きだったデザインやイラストをSNS上で公開したら、少額ですがお仕事として依頼をいただいたんです。始めてみたら後から対価が生まれた、という感じでした。

オリーブ農家の手伝いも同様に、きっかけはぼくが沼津に帰ってきたことを知った学生時代の恩師から、先生の農園の手伝いを誘ってもらったことです。「面白そうだからやってみたい!」と思いました。

(お手伝いするオリーブ農園の代表で、藤川さんの恩師でもある大嶽安司さん(右)と)

藤川さん: 手伝いに行っているうちに「作ったオリーブをどうやって売ったらいいかわからない」という声を聞き、オリーブの実の販売サポートを副業でするようになりました。また、実は先生が昔から所有している畑が管理できずにあることも見えてきました。そこで、かつて畑だったまま使われることのない土地を利用する話も持ちあがり、宿泊型コワーキング施設を作ったりもしています。

ぼく自身、幼い頃から「人生は一度きり。みんなと同じことをするのはつまらない。人がやりたがらないことをする方が面白い!」という気持ちが強く、高校在学中はダンス部に入部できずバイト代でダンススクールに通い、大学生の時も自分でサークルを立ち上げるなど、常に人と違うことをやっていましたね。

しかし会社に入ってからは、仕事の忙しさに飲まれていたんです。今思えば、ずっと鬱屈としていましたね。でも本来の自分を、在宅ワークを機にやっと取り戻すことができたんです。もう、やりたいことが爆発した感じです(笑)まだ他の人がやっていないことで、楽しいからやっている。ただそれだけなんです。

ポテンシャルだらけ、ストレスなし

ハタケト: 自分を解放できたことは、東京から沼津に移ったことも影響していますか。

藤川さん: それも大きいですね。ぼくは沼津を単体と捉えるのではなく、静岡東部伊豆半島という地帯まで含んで、一つの大きな魅力があるエリアだと捉えています。沼津にはおいしいご飯があって、伊豆は感動する自然風景や温泉などもたくさんあります。けど温泉や海などの観光地だけではなく、この一帯にはまだまだ活かせきれてない魅力があると思っているんです。

地元で生まれ育った自分が、シンプルに「え、知らないの?めっちゃイケてるのに!」という地域の魅力をお知らせしたいんですね。

また沼津に戻ってからは、精神的にも完全にストレスフリーになりました。社会人になってから、こんなに自由だと感じることはありません。出社していると当然、時間的な拘束があり、平日には本業しかできませんよね。でも今は本業をしながら、例えば副業で、市役所に行く必要があれば平日でもすぐに行くことができます。

今の仕事量は本業3、その他7くらい。たまに会社からは怒られますが、社内の後輩たちは自分のしていることを理解して助けてくれるので感謝しています。

ハタケト: バイタリティがすごいですね。みかんビールはどんなきっかけでしたか。

藤川さん: オリーブを栽培している恩師に「みかんも大量に余っていて捨てるだけで困っている」という相談を受けたからです。ビールを作ろうと思ったのは、シンプルにみかんのビール作ったらかっこいいなって思ったから。とにかく新しいことをしたいんです。

繰り返しが多く新鮮な体験が少ないことが日常になると年月の過ぎるのが早い、と言われていますが、ぼくの場合、新しいことをたくさんしていた2020年はとても長く感じました。これからも体感する人生を長くしたいんですよね。毎年「今年もあっという間だったなあ」と人生を振り返るのではなく、「今年も色々あったなあ」と言って生きるおじさんになりたいです。

「農業」と認識しない、ハタケとの関わり方

ハタケト: オリーブやみかんなど地域の農業を盛り上げる副業が多いのはどんな理由ですか。

藤川さん:  ぼく自身には「農業」という仕事に携わっている感覚はそもそもありません。農業と関わりはじめて気付いたのですが、「農業」と言いすぎて閉鎖的な仕事にすることも、若い世代などが興味をもたなくなっている理由ではないかと思うんです。

ぼくのように会社員をしながらでも農業には携われる。農業に身構えることはなく、もっとライトな形で農に関わる人が増えて欲しいです。それに、農業をしているのではなく、オリーブ育ててるんだよねって言った方が、なんだかかっこいい気がするんですよね。

常識は打ち砕かれた。ゆとり流でいこう

藤川さん:  沼津にUターンしたとは言いましたが、実は東京にもまだ暮らせる場所は残してあって二拠点生活なんですよ。ずっと沼津にいたら刺激が足りなくなるから、その時は東京にも行こうと思っています。

ハタケト: それはすごくわかります。わたしも刺激を得る場所として東京に行っているから。でもずっと東京にいると刺激過多になっちゃうから、自分のちょうどいいバランスで関わりたいですよね。(参考コラム:女性として、ブランドプロデューサーとして。「刺激2:解放8」がベストバランス

藤川さん: 本当そう思います。コロナ禍になって、これまでの働き方も暮らし方も、常識が撃ち砕かれました。今なら周りの人の顔色をうかがわず新しいことにも挑戦することができると思うんです。今が、チャンスです!失敗してもいいから、やりたいことやればいい。

ぼくの中ではPS4を買うのと事業を始めるのは同じことです。面白そうだから、ちょっと始めてみようかな、という気軽な気持ちで始めています。最近はビジネスって言葉も面倒くさいので、副業はライフスタイルの一環と捉えています。もっともっとライトに、カジュアルに始めちゃっていいと思うんです。ぼくはゆとり教育の成功例になりますよ。なんせ今、人生にゆとりしかありませんから(笑)

(インタビューここまで)

藤川さんとは出会った頃から「同類」の臭いがしていて、この人とは一緒に仕事したら楽しいだろうなと感じていました。

「みかんでビール作れないかな?」と相談を受けたときも、ただ材料を提供するだけでなく自ら率先して60キロものみかんを収穫、果汁搾り、ピール作り、それに撮影までご友人に声をかけて協力してくれたのです。

仕事を遊びやライフスタイルとして捉え、「楽しいからやる」というマインドですぐに行動しちゃうフットワークの軽さが彼の魅力です。彼のようにもっと気楽な気持ちでハタケとの関わりを築いていく選択がこれからの時代に必要なのではないでしょうか。

インタビューで聞かせてくださった話にもとても共感しました。常識が変わる今だからこそ、ゆとり世代が自分たちらしく、しなやかな選択をしていきたいですね。