※畑のそばの、豊かな暮らし発掘メディア「ハタケト」は、2022年9月1日より愛食メディア「aiyueyo」にリニューアルしました。

こんにちは。ハタケト代表のあべなるみです。”ブランドの助産師”として、埋もれる個性や愛を伝わる形に変える日々。中でもハタケと関わるお仕事は、わたしに知らなかった自然の真理やいのちへの愛を気づかせてくれています。

そんな気づきのひとつひとつを、言葉を紡ぎ、ご紹介できたらと思っております。

人生と計画。

わたしは、計画を立てるのが好きだ。いや、正確に言うと、好きだった。大学3年生のとき、わたしはこれからどう生きていたいかを考え、45歳までの人生計画をつくった。それは毎年のやることが決まっているような綿密な計画ではなく、「何歳に何をしている」という何個かのマイルストーンが置かれた程度のものではあるのだけれど、つい最近、28歳くらいまで、わたしはこの計画にしごく忠実に生きていた。

そのせいか、友人に「あべちゃんって生き急いでいるよね」なんて言われてしまったことも(笑)
大学の受験に、「修行」と位置付けた若手社会人時代、結婚〜出産。いつだってゴールとスケジュールを課し、その達成という負荷を自分にかけてきた。達成できなかった姿を想像し、怯え、強迫観念のような感情で自分に無理やりエンジンをかけるのである。

そうやって成功してきたし、それが自分らしさの一部であったことは認めざるを得ない。だけど、ふと、自分がやりたいことをやっているようで、途中から生き苦しくなっていることに気づくようになったのだ。
自分で自分の首を締めて、勝手に苦しくなる。

この苦しさって、ほんとうにいる?

りんごの木が教えてくれたこと。

自分の在り方への若干の違和感が感じていた2年前の秋。わたしはハタケトの取材と題して青森へ飛んだ。一面に広がるりんごの木においしそうなりんごちゃんがわさわさなりはじめた、最高に美しいタイミングだ。

(お天気はちょっと悪かったけど、一面りんごの風景は圧巻)

りんごは、お野菜と違って毎年同じ木に実をつける。永年作物というらしい。

永年作物であるりんごは、仮に今年無茶をさせて、たくさんのりんごを実らせたとしても、その次の年は実をあまりつけなくなってしまうらしい。

無理を通した分の、反動があるのだ。

この事実は、もやもやしていたわたしの心にクリーンヒットした。
無理やり心に鞭を打って走ってきたけれど、それはやっぱりサステナブルなやり方ではないのだ。

実際、見えないようにしてきただけで、反動はすでに感じていた。
薬を重ねて重ねて、ごまかしていく方法も世の中にはある。
でも、わたし自身がその選択をして、生きていきたくはないなぁと思った。

りんごの木は無理をさせない範囲で、平均点をあげていくという形で、成長させることもできるらしい。
ちょっとずつで良いから、毎年ステレッチしていく。その在り方がわたしにとってはヘルシーだと感じた。

思い通りにいくこと、いかないこと。

わたしの立てる計画というのは、そもそも「思い通りにいかないこと」の発生を前提にしていないところがあった。

人生とは、自分の努力の結果であり、やった分だけの成果は得られて当然。それは、もちろん真実ではあるけれど、すべてではない。そのこともハタケトとのふれあいで知り、また自分が子どもを出産して納得できたことのひとつだ。

思い通りにはなってくれない自然と日々対峙しているハタケトの方々というのは、総じてみんな柔らかいのだ。
受け入れながら、そのときどきの変化を楽しむ心の余白がある。
それは計画信者だったわたしが持っていなかった「豊かさ」だった。

今世の中は、いつ何が起こるかわからない不確実性が連続するVUCAの時代※と言われている。

VUCA(ブーカ)とは、Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)という4つのキーワードの頭文字から取った言葉で、現代の経営環境や個人のキャリアを取り巻く状況を表現するキーワードとして使われています。

出典:https://bizhint.jp/keyword/40037

そんな時代の中で計画にすがり、思い通りを貫こうとするか、思い通りにいかないことを受け入れ、楽しめる余白をもつか。

もう長らくそうやって生きてしまったから、自分をすぐには否定できないけれど、答えは出ていた。

そのとき、心が踊ることを。

今月、30歳を迎えるわたしは、大好きだった計画を手放すことを考えている。向かいたい場所は変わらないかもしれないけれど、そのために無理やりスケジュールをきって自分を追い込むような生き方は手放そうと思うのだ。

そのときどきで自分の心に問いかけて、心が踊れる範囲のことを、叶えていく。それを積み上げていけばいい。

焦らない、焦らない。
生き急がない、生き急がない。

とはいえ、突然エンジンをかけたくなる衝動は簡単には抜けないので、そのときはあのりんごの木のことを思い出して、大きく、深呼吸でもしようと思う。

ヘルシーな成長を目指すのだ。

この在り方は、日本語で言うと、「しなやか」という言葉なんだろうなぁと思っている。
恐怖で動く人よりも、しなやかに前を向く人でいたい。


30代への目標は、りんごの木が教えてくれたのだ。

(今回の話に出てきた、りんごの木の取材の時の記事もよければご覧ください▼)

ライター/あべなるみ

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