このマガジンは「畑のそばに生きる様々な人」と「その暮らし」の紹介を通じて、皆さんと一緒に生き方の選択肢を再発掘していくメディアです。

以前、「週2ファーマーとして」農園に勤務される田山ゆきさんをご紹介しましたが、今回は田山さんの勤務先である森田農園にお邪魔し、園主である森田昌(もりた あきら)さんにお話を聞きました。

祖父母から学んだ「早めの旬」の実践

ハタケト 農園のこと、そして農業を始められたきっかけなどを教えてください。

森田さん  千葉県の流山市で、森田農園の園主をしています。農園を始めたときは26歳、今年で2年目になります。現在は、年間約80品目ほどの野菜を生産しています。もともと飲食店で働いていたので、飲食店経営での独立も視野に入れていたのですが、食の分野であれば、祖父母の畑を活かすのもいいな、と思いました。独立志望は強かったですね。

ただ、祖父母からは当初「農家は儲からないからやめておけ」と反対されました。それでも挑戦したい気持ちが諦めきれなかった。農業自体が儲からないのではなく、やり方なんじゃないか、と変な自信があったんです。

とはいえ祖父母から学んだことももちろんあります。たとえば「ちょっと早い旬でお届けする」という栽培方法で、ぼくもそのスタイルを引き継ぐことにしました。野菜は、じっくり育てた方がおいしくなったりするので、仮に夏栽培の野菜でもまだ少し寒さが残る時期から着手しはじめるんです。ひと手間かけるとグンとおいしくなって応えてくれるんですよ。また、いつも季節の野菜に触れてもらいたいという思いから、常に旬のものがあるように多品目栽培という今のスタイルに至りました。

ハタケト 農作物はどんなところに販売されてますか。

森田さん 流山や柏などの八百屋さんに卸したり、マルシェなどに出店して対面販売をしています。できるだけぼくたちの思いや希望を理解してもらえるところで販売するようにしていて、野菜の値付けも自分たちで決められるように、いまのところ市場への出荷は考えていません。

(ここで、取材に同席してくれた田山ゆきさんから「森田さんは周囲の出店者に合わせるというより、自信をもって自分の値段を決めているんですよ」と教えてくれました)

森田さん ぼくらは決して適当な栽培をしていないですし、ちゃんと自分たちで「おいしい」と思えた野菜を、自信をもって販売しています。対個人だと、それを理解してもらえてることがわかるんです。これからもぼくらのやる気をわかってくれる方々においしい野菜を届けていきたいです。

求人は「週1日、3時間からでもOK」

森田さんと週2農園ワーカーの田山さん

ハタケト 現在の運営メンバーについて教えてもらえますか。

森田さん 祖父母と母が手伝ってくれているのに加えて、アルバイトのかたが7名です。そのうちがふたりが男性で、大学生と20代の方。あと5人の女性はパッキングや種まきなどの担当と、販売中心に担当してくれるメンバーがいます。田山さんは販売が多いですね。

現在アルバイトさんの時給は900円でお願いしています。決して高い金額ではありませんが、農業にはキャッシュを稼ぐ以外の良さがあって、それを感じてくれている人たちが来てくれてます。食に興味があって、やる気があって、個性があって、本当に多様なメンバーです。週1出勤の男性スタッフは、普段は移動販売のクレープ屋さんを経営されてる方だったり、大学生はGAPでショップ店員もしていて、渋谷で遊んだりするタイプ、クラブ帰りで畑に出勤してることもあるんですよ(笑)

ハタケト いい人材が集まる理由はなんだと思いますか。

森田さん なんでしょうかね…(田山さんをちら見)

田山ゆきさん (笑)わたしの場合はSNSで「週1、3時間からOK」と書いてくれていたのを見て一気にハードルが下がりました。農園はもっとしっかり関われないと働けないだろうと想像していたので、「え、そんな関わり方でもありなんだ!」と素直に驚いた記憶があります。しかも時給の他に野菜ももらえるなんて嬉しいですよ!

森田さん 将来的にはいつか、がっつり関わってくれる人もいてほしいんですが、畑に関わりたい人が必ずしもがっつりを希望されているわけではないんですよ。例えば、主婦の方の場合、土日祝日や長時間拘束の勤務は難しいと思いますが、逆の人もいます。だからいろんな人が来てくれた方がいいんです。時間は短くてもいいから、その代わり長く続けてもらいたいですね。

いろんな人がいてくれると、それぞれの話が聞けて、ぼくも楽しいんですよ。それに例えば、販売員の経験があるひとには接客スキルを活かしてマルシェを手伝ってもらったり、ITに強い田山さんにはホームページづくりを手伝ってもらったり、得意なことを得意な人ができるのがいいと思っています。

ハタケト この休憩室のマニュアルも、どなたかがイラストを描かれたんですか。

森田さん それは母が作ってくれたものです。いろんな人が増えると難しくなるのが伝達の仕方で、そこに気がついた母が書いてくれていました。これがあることで一気に共有力が上がり、本当に助かっています。誰にとってももわかりやすい伝え方はこれからも模索していきたいですね。

スタッフもお客さんも。人が出入りする農園にしたい。

ハタケト 今後、挑戦したいことはありますか。

森田さん 農作物の生産量は増やしていきたいです。それと、今後の目標は貸し農園事業と、BBQ場を始めることです。

例えば週末なんかに、手ぶらで来ても畑で土をいじれるような貸し農園にできたら喜ばれるかな、と想像しています。BBQ場は、小高くて景色の良い高台に、うちが使える場所があるので、そこを有効活用するひとつのアイディアとして考えてるんです。他にもいい選択があるかもしれないけど、耕作ができない場所なので何か気持ちよく使える方法を考えたいです。いろんな人が出入りする、にぎやかな農園にしたいですね。

流山は都心からのアクセスもよく、移住者も増えていて、どちらかというと住宅街です。畑がここにあるので、ぼくたちが都心に出て事業を拡大するよりも、畑があるここに来てもらって、農産物が育つ空気を感じてもらいたい。また、人が来てくれることでこの街も豊かになっていくと思います。

農業って、無限の事業だと思うんです正直、愛情をもって野菜を大切に育てるのは農家としては当たりまえのこと。ぼくは別に頭がいいとか、いい会社にも入ってるわけじゃないけど、自営業は自分で自分の収益を決められる面白さがありますよね。やればやるだけ広がりをみせてくれる環境が好きなので、発想は自由にもって、その中でせっかくある資産を活かせるといいな、と。

貸し農園の場合、事業としては不動産事業に近いのできちんと運営できれば安定した収益になります。農業にはどうしても端境期(はざかいき:農産物があまりできない期間)がありますが、せっかく楽しく働いてくれるスタッフに、この期間だけ来てとか、この時期は来なくていいよ、なんてことはできるだけしたくない。なので農業以外の事業でも稼げるようになれたらと考えています。できたら、30歳までには始めたいですね。

BBQ場予定地。確かに風が抜けてとても気持ち良い場所!

(森田さんへのインタビューはここまで)

積極的で意欲的、そして、自分たちの仕事に自信をもっている姿がまぶしい森田さん。きっとこれからの3〜4年で、森田農園を訪れる人が増えていくことでしょう。

森田農園は、常磐線の南柏からバスで一本。農園の目の前がバス停という好立地なので、ご興味をもった方はぜひSNSやホームページをご覧になってみてください。