管理栄養士、お野菜レシピ考案家として活動している、いまむらゆいです。野菜の楽しさを伝えたくて、料理教室の講師やライター、レシピ作りなどのお仕事をしてきます。「畑が好き、野菜が好き」そんな思いを持ち、さまざまな活動をしていく中で、ハタケトとご縁が繋がり、記事を書かせていただくこととなりました。

突然ですが、与えられた仕事をしていく中で、違和感を抱えながらも続けていた経験はありますか?
わたしはあります。「本当はこうしたい」そんな気持ちをもちながらも、型通りの仕事をしていくのは心地の良いものではありませんでした。

社会に出て仕事をするには不器用な性格なのかもしれない。思いをもってできる仕事でないと、うまく動けないことが悩みでもありましたが、その個性も受け止めようと決めて、今のスタイルで仕事をしています。

前回のコラムでは、今している野菜や料理に関わるお仕事についてお伝えしました。今回は、会社員時代に感じていた心の中の違和感と、これからわたしが挑戦していきたいことについてお話ししたいと思います。

畑とカット野菜工場を行き来する生活で見つけた本心

大学卒業後、第一志望の大手青果物流通会社に就職。配属されたカット野菜工場で毎日何トンというキャベツや人参を目にする日々が始まりました。はじめは野菜に関われるというだけで嬉しさが溢れていましたが、入社して1年が経ち、毎日の光景に違和感を感じるようになりました。

同じ頃、休みの日には知り合いの農家さんのところへ農作業のお手伝いに行くようになっていました。就職活動を通じて出会った、地産地消活動団体に携わっている農家さんです。

農業についてなんの知識もないわたしに、色んなことを教えてくれました。「農業は40年やっても40回しかできないんだよ」そんな言葉が印象的で、季節の流れとともに生きる農家さんの姿が凛々しく、格好良く見えました。

畑で見る野菜からあふれる生命力。わたしの目には、夏の暑い日に耐え、霜の降りる冬を乗り越えて育つ野菜がとても愛しく映りました。農家さんが思いを込めて作った野菜には、栄養以上に心と体を健やかにしてくれる何かが詰まっているようにも感じられるのです。

カット野菜工場で勤務しているときは、すでに土が落とされ、大きなコンテナに入った野菜たちを目にします。衛生管理が徹底された工場は、年中同じ温度で室内が保たれ、目以外を全て覆うように白衣を着ています。

「この野菜たちも農家さんが育て、人の手によってここに辿り着いてるはずなんだよな」

そう理解しつつも、工場で見る野菜はなぜか無機質なものに感じてしまい、ハタケと野菜が分断されているような気がしてきました。

カット野菜工場の存在も、野菜を供給する上では、今の世の中では欠かすことのできない存在です。ですが、わたしの中で「野菜が生きていることをもっと実感したい」という思いが膨らみ、もっとハタケや農家さんのそばで仕事ができるように環境を変えようと決めました。

自分の中に生まれた違和感をそのままにせず、より心が動く場を選択しました。

転職先の八百屋さんは地域密着型。野菜の集荷や配送、仕分け、発注、営業の仕事などを経験させてもらいました。

すぐそばに畑があり、農家さんがいて、丹精込めて育てられた野菜がある光景は、野菜が生きていることを感じられる毎日。湧き上がる安心感と心地よさがありました。

配送先の飲食店さんに「◯◯さんのこの野菜、おいしいのでぜひ使ってみてください!」と伝えたり、農家さんに「どこどこのお店で、里芋が大好評ですよ!」と伝えて喜んでもらえることが、なにより楽しく嬉しくなる瞬間でした。

「野菜の流通を一方通行にせず、思いの循環をさせていきたい」

初めは「健康のため」の野菜の供給という視点だったわたしは、いつの間にか「野菜で繋がる思いの循環」に楽しさと魅力を感じるようになりました。

素直に自分から沸き上がる感情を認め、表現することの心地よさを教えてくれたのは、野菜であり、ハタケの存在でした。

心が突き動かされる方に来れた「今の自分」が好き。

また、八百屋さんへの転職と同時に、個人で野菜の切り方教室を始めました。野菜を調理し、野菜を楽しく食べる人が増えてほしいと思ったからです。仲良しの農家さんの野菜を使って、その魅力を生徒さんに伝えられたらどんなに楽しいだろう!とわくわくが止まらなかったことも理由の1つです。

八百屋さんに1年と少し勤め、結婚を機に退職した後も、思いを伝える手段として、ライターやレシピ作りなど始めて今に至ります。

大学時代は心の違和感を無視したことで体調を崩し、心を強くする方法ばかりに目を向けていました。今は、自分の心に安心感が湧いてくる道を選ぶことで、心を柔軟にすることが出来るようになってきたように思います。

無理に心を強くしようとしなくていい。どんな感情も受け入れ、認め、心地よいほうへ心を向けることを大切にしています。

ハタケに行ったり、野菜について語っていると「いい顔してるね!」とよく言われます(笑)特にハタケで過ごす時間は、生き生きとした自分になれて、そんな自分がとても好きです。日に焼けても、爪の中の土が取れなくなっても、苦手な虫とご対面して叫んでも、全部が全部なんだか幸せに感じてしまうんです。

ハタケに通うようになってから、その野菜がどんな農家さんに育てられ、どんな土地で育ち、どんな思いが込められているのか、身に染みて分かるようにもなりました。野菜の背景を知ると、野菜の味わいも変わり、味や香りだけではない、特別な深い美味しさを感じることができます。

わたしがずっと野菜に関わる仕事をして、ハタケのそばにいたいと思い続けるのは、心が動かされる特別なおいしさを知ってしまったからです。この思いをこれからも大事にしていきたいと思っています。

これからの夢と畑と家族と

現在は主に料理教室、ライター、レシピという形で、野菜のおいしさや楽しさ、思いを伝えています。これからも形にとらわれず、ハタケや野菜の素晴らしさを表現していくことが夢です。

そして今、お腹に新しい命を授かり、もうすぐ母になります。昔からの大きな夢であった「母」になること。子育ての中にも、土との触れ合いや野菜に興味をもつキッカケを作り、ハタケに関わることの楽しさを伝えていきたい。それが新たな楽しみであり、夢となりました。

ハタケや野菜と関わる時間に加え、今では家族で過ごす時間も大きな安心感に包まれる時間です。この大事な時間を守れるように、生活の流れの中で、自分も家族も幸せにできる仕事の仕方をさらに構築していきたいと思っています。

感情や感覚を指針に動くようになって見つけた自分の仕事。学生時代には、社会に出たら「自分の感情や感覚的なものは無視しなければならない」と心のどこかで思っていたような気がします。

今は「心の違和感を無視しなくても、自分の感性を大切にしてもいいのではないか」と考えています。自分の人生もまだまだ実験。心地よさを大事にしながら進んでいくことを体現できる人になりたいと思っています。