このマガジンは「ハタケのそばに生きる様々な人」と「その暮らし」の紹介を通じて、皆さんと一緒に豊かに生き方の選択肢を再発掘していくメディアです。

今回お話をお伺いするのは、長崎県大村市の山の上で養豚を営む上野養豚の上野淳子さん。

上野養豚では昨日「まるごとん」という名前の自社オンラインショップをオープンし、豚肉の一頭分のまるごと販売をスタートしました。

初回販売は、なんと一頭分約60kgを3時間で販売終了!
大人気だった豚肉販売ですが、そもそも養豚場が自らお肉の販売をするって、なかなか聞いたことがないですよね。

どうしてお肉の産直販売に取り組むのか。今回淳子さんと共に「まるごとん」のブランディングをお手伝いもしたハタケト編集長のあべなるみがその思いに迫ります。

人に共有せずにはいられない?お腹に沁みる山のウエノ豚のおいしさ

あべ:はじめて山のウエノ豚を食べたとき、本当に驚きました。味がすごくおいしいのはもちろんなのですが、なんというか、愛されたいのちをいただいているんだ、というのが伝わってきたというか。

淳子さん:そうやって言っていただいけてとても嬉しいです。確かにうちの豚肉、以前成分の検査にも出したのですが、主要な栄養成分という視点では何かが特出しているような要素は検出されなかったんですよ。でもありがたいことに、食べていただいたお客さんからは「感動した」「どこで買えるの」と言っていただけます。

あべ:確かに今回、ご紹介いただいた山のウエノ豚ラバーのみなさんにお話をお伺いさせていただきましたが、全員おいしさへのあまりの驚きに、自分の夫や子ども、お友達に「ちょっと食べてみて!」と共有されていました。人に共有せずにはいられない感動があったみたい。そういうわたしも、夫に「ちょっと食べてみて!」と興奮してシェアしました(笑)。おいしさの秘訣ってなんなのでしょうか。

淳子さん:単純ですが、豚たちのことをすごく考えていることでしょうか。

わたしは動物が好きで大学では動物応用科学科という動物のことが広く学べる科に入学。そこで豚と出会って養豚場に就職しました。そしてその農場で、主人と出会って結婚。お家の養豚場、上野養豚にきました。

上野養豚はわたしの義父が1代目で立ち上げた養豚場です。はじめて来たとき、「ここは豚たちのことを、すごくよく考えて設計されている!」と感動したことを覚えています。

(山のウエノ豚と言う通り、山の上になる養豚場。)

淳子さん:日頃の生育では、豚たちが健康に過ごせるかという視点で、環境づくり、食事、体調管理をしています。そういうひとつひとつの積み重ねがお腹にも届いている、と信じたいですね(笑)。

届けたくても届けられない大きな仕組み。

あべ:日頃から丁寧に豚さんたちと向き合われているのですね。さて、そんな上野養豚が、なぜ今回自社販売をスタートさせたのでしょうか。

淳子さん:以前から興味はあったのですが、一番の理由は、ウデ子とモモ子のおいしさを伝えたい!と思ったことです。

あべ:ウデ子とモモ子…!

淳子さん:豚肉と言うと、ロースとか、バラ、スペアリブなどの部位はよく聞きますよね。でも実は豚肉にはウデやモモという部位もあって、なんならそちらの部位の方が、量としてもロースやバラよりも多いんです。

皆さんが聞き馴染みがないのもしょうがなくて、モモやウデはその部位の名前で生肉としてスーパーやお肉屋さんに並ぶことはなかなかありません。多くは市場で安く取引され、ハムやソーセージといった加工品の材料になっています。

あべ:おいしくないから、ですか?

淳子さん:味というよりもカットの手間がかかることが理由です。筋の入り方が複雑なので、カットする手間がメジャーな部位よりも余分にかかってしまう。だったら、簡単な部位の方がいいよね、となっているんです。

「かたい」という意見もありますが、本当かな、と試しにうちのお肉を取り寄せて食べてみたんです。なんども食べてみましたが、ウデ子もモモ子もそれぞれの個性があって、おいしいんです!この子たちもちゃんと胃袋に届けたい。それでいつかはと思っていた自社加工場の夢をやろう!と動き出しました。

届けるところまで、愛を込める。

(葉っぱを美味しそうに食べる。この豚さんたちはこれから出産を控えたお嫁さんたちだそう)

あべ:今まで思う形で届けられていなかったウデやモモの部位を届けたいという思いが背中を押したのですね。

淳子さん:はい。ただ、ウデやモモが「もったいない」から食べて欲しいということではないんです。同じ豚の部位でもそれぞれ、味わいが全然違うんです!だからみんなでワイワイ一頭分をシェアして、いろんな部位のおいしさを共有できたらと思っています。

あべ:なんだか淳子さんとお話ししていると、豚肉と向き合う粒度がすっかり変わってきました。鶏肉、牛肉、豚肉の違いは分かるくらいの感覚だったので、新しい楽しみができた気分です!

淳子さん:わたしは全部の部位をアイドルのように感じています!

有名なアイドルに例えさせていただくと、脂も肉の味も濃厚な肩ロースは松潤、あっさりとした肉質だけど旨い脂があるのですなロースは大野くん、まさに豚肉界の正統派!脂と肉が交互に挟まる代表選手バラは櫻井くん。そしてさっぱり爽やか!みんなが食べやすくて愛されるモモはあいばちゃん。その奥にはスジが潜んでいたり、実は肉の味が濃かったり秘めたる魅力のあるウデはニノと言う感じです。

私の好きな嵐で感覚的に例えるとそんな感じですが、それぞれの違いを今回の「まるごとん」の購入者には分かるようなパンフレットを同封しました。

違いを感じてもらいながら、自分の推しを見つけてもらえればうれしいです。

あべ:自信があって、何より自分が大好きだから今回の形の販売なのですね。こんな思いをもつ作り手に育てられたいのちをいただくこともとてもうれしいです。今回はお話しありがとうございました。

(インタビューここまで)

わたしたちは食べているものでできている。だったら作り手の精一杯の届けたい、という思いののったいのちをいただけることは、とても尊いことだなと感じました。

まるごとんは今後毎月第一金曜日から3日間、売り切れ次第終了で販売するそうです。
今後の販売にも注目です!