こんにちは。ハタケトの編集長で、食と暮らしのブランディングカンパニーTUMMYの代表をしています、あべなるみです。

「魅力的なものは畑に・地域にすでにある」と信じているわたしのテーマは「今は埋もれているかもしれないけど、本当はお腹から感動するくらい素敵なもの」を発掘・発信すること。そんなわたしが、直近でブランディングをお手伝いさせていただいた「夏日牛」を紹介しながら、「お肉を食べること」につきまとう感情・倫理的な部分について思ったことを書かせていただこうと思います。

肉汁溢れるのに、胃もたれしない?おいしいのにやさしいお肉、夏日牛

はじめて夏日牛をいただいたのは去年の5月のこと。
主催したイベントに、参加者として夏日牛の育ての親である伊藤夏日さんがお肉を持参してくださり、その日の夕食に夏日牛を焼肉にすることに。その時、あまりのおいしさに自分でも信じられない量のお肉を食べてしまったんです。
そもそもわたしは「焼肉」があまり得意ではなく、牛肉の脂に胃がやられてしまうタイプ。そのため、みんなが同じ数のお肉を食べるような焼肉屋の席では「うぅ、苦しい。。」と思いながら、脂を緩和すべくサンチュを大量摂取するような人間でした。そんなわたしが抵抗なく、大量のお肉を食べられてしまったこと自体、かなり衝撃的な体験でした。

実際、ブランディングを手伝うことが決まってから、夏日牛のファンの方々にお話を聞くと「お肉が苦手な娘も夏日牛は好き」とか「胃もたれがするようになってきたが夏日牛はおいしく食べられる」という声を聞くことができました。匂いも脂も味わいもやさしくおいしい夏日牛は、「牛肉の脂が苦手」という人にも食べていただきたいお肉です。

夏日牛について詳しくはこちらをご覧ください。
https://natsuhi-beef.jp/

本当は触れずにいたいお肉の「その先」

そんな夏日牛が他のお肉とどう違うのかが分かったのはその後、改めてブランディングの相談を受けた時です。相談の内容は「”お母さん牛”である夏日牛を販売したいので手伝ってくれないか」というものでした。

「え?お母さん牛って何?」

そんな状態から話をさらに詳しく聞くと、普通の肥育牛は2-3歳程度で出荷されているのですが、お母さん牛は平均8頭の牛を産み、10歳程度でその役目を終えるそう。たくさん子どもを産んだ分、お母さん牛は当然、通常の肥育牛より歳を重ねています。そして歳を重ねた分「お肉が硬くなる」というのが市場の常識。「お母さん牛」は価値の低いものとして安いミンチ肉や細切れとして流通することになっているのだそうです。

そもそもお肉になっている牛さんの年齢も、お母さん牛の存在も知らなかったわたしにとって、そのどの話も驚きの内容でした。
背景を知れば知るほど、ただお肉を「おいしい〜!」と食べていた時には考えもしなかった「牛のいのち」が頭にちらつきます。

「お肉の購買の際に生きている姿を見せるのは「かわいそう」という気持ちが湧いてしまうから避けた方がいい。」

そんなことも言われている業界。
販売支援をするにあたって、そもそもお母さん牛であることも伏せて、おいしさだけで勝負した方がいいのではないか。(そのくらい、とってもおいしいので)その方がシンプルに売れるのではないか。わたしの中でどこまで伝えるべきなのか、という大きな葛藤が生まれました。

「やさしさの本気」に触れて

そんな葛藤がなくなったのは4月に夏日さんが知人ベースで販売してくれた「かつき」というお母さん牛のお肉を食べたことでした。

「かつき」さんは、なんと21歳で出荷されるに至った、スーパーお母さん牛。数多くの子どもたちを出産した牧場の功労者の中の功労者という存在です。

実際にお肉が届き、その背景も丸ごと食べた時に、お肉は感動するほどおいしかった。
ブランディングの相談の際、夏日さんは「牧場にたくさんの恩恵を残してくれた功労者たるお母さん牛を、最後までいいものとしてお届けしたい。」という趣旨の話をしてくれました。

実際、お母さん牛をおいしいお肉として流通できるように、夏日さんはお母さん牛の肥育期間を余分に設け(餌代がかかるので普通はやらない)、餌を工夫したりしていました。そこには夏日さんの「やさしさの本気」がありました。

お母さん牛と向き合う夏日さんのやさしさこそ、他にない、素晴らしい魅力だ。その本気を隠して販売すること自体が間違っていると思いました。

いのちを感じて食べて、いいじゃない。

そんなことを考えたブランディングの過程、そして日々のハタケト発信を通じて今クリアに思っていることは、そこに「いのち」があったことを理解し、感じて食べることは人間にとってとてもヘルシーなことではないか、ということです。

だって、お肉に限らず野菜だって、お米だって、いのちですから。

そこにあったいのちに感謝し、おいしく食す。
作り手が注いでくれた愛情の分、おいしく食す。

以前取材をさせていただき、今回夏日牛のブランディングでも協力をいただいた家畜写真家のAKAPPLEさんも「いただきます。」をもう一度心を込めていう人が増えてほしい。という思いを語ってくださいました。

なんだかわたしたちは食の背景にある「いのち」の存在を遠くに忘れすぎてしまっていたのかもしれません。

難しいテーマではありますが、精一杯生きたお母さん牛をおいしく食べる体験をシェアできる方が増えたら、関わった身としても、この上ない幸せだなと思いました。

夏日牛のオンラインショップ:https://natsuhibeef.base.shop/

8月は1頭のお母さん牛のお肉を販売、なくなり次第の終了です。ぜひ食べてみていただけると嬉しいです!